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東京高等裁判所 昭和54年(行コ)1号 判決 1981年2月19日

東京都台東区千束一丁目一五番一号

控訴人

沼田政和

右訴訟代理人弁護士

佐藤義行

中川明

喜田村洋一

右訴訟復代理人弁護士

鈴木五十三

東京都台東区蔵前二丁目八番一二号

被控訴人

浅草税務署長

高橋昭典

右指定代理人

梅村裕司

佐々木正男

白藤茂

佐藤孝一

右当事者間の相続税更正処分等取消請求控訴事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人が昭和四八年一二月二〇日付でした控訴人の相続税についての更正処分及び過少申告加算税賦課決定(いずれも昭和四九年六月二四日付再更正処分及び昭和四九年七月五日付再々更正処分により一部減額された後のもの)を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、主文と同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠関係は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決の摘示事実と同一であるから、ここにこれを引用する。

(控訴代理人の陳述)

一  本件家屋の昭和四八年から昭和五五年までの毎年度の固定資産税評価額は、いずれも、昭和四七年度のそれと同一であるが、これは、東京都知事(地方税法四一〇条、七三四条一項、東京都都税条例四条の三第一項七号参照)において本件家屋の価額を決定するに当り本件改造工事を考慮する必要がないと判断したか、あるいは、本件建物二階内部の取壊しによる減価額と本件改造工事による増価額とがほぼ等しいと判断したことによるものであるから、昭和四七年度の固定資産税評価額は、結局において、本件改造工事による資産価値増加の事実を反映しているものというべきである。

二  もし本件相続の開始が昭和四八年中であつたとすれば、被控訴人も、本件家屋の価額の決定に当つては、同年度の固定資産税評価額(それは、昭和四七年度の本件改造工事による資産増加額が加算されていない評価額と同一である。)によつたものといえるから、たまたま本件相続の開始された昭和四七年度の固定資産税評価額が本件改造工事による資産価値の増加を反映していないという理由により、右評価額に資産価値の増加額を加算して本件家屋の価額を決定する方法により課税することは、租税公平主義の原則に反し、是認することができない。

三  原判決一一枚目裏三行目の「さらに、」から同七行目の「明らかである。」までの主張を「さらに、控訴人は昭和四八年一一月本件借地権の存する土地の一部である原判決米尾添付の別表一の番号1ないし8及び13の土地を地上の各建物とともに同建物の賃借人らに売却したが、右売買実例における土地売買代金中借地権の価額(実際時価)に相当する部分は一、九九一万九、一九五円であるのに対し、右借地権に対する被控訴人の評価額は一、八三五万九、四四〇円であつて、被控訴人は右借地権の価額を実際時価より一〇パーセント弱減額して評価したにすぎない。一般に、相続財産評価額は、宅地については、おおむね実際時価の六〇パーセント程度に抑えられているのが現状であることを考えると、被控訴人は一般の相続税負担割合に比べて三〇パーセントも高い割合の評価をしたものである。」と訂正する。

(被控訴代理人の陳述)

一  本件家屋の昭和四八年度以降昭和五五年度の固定資産税評価額がいずれも昭和四七年度のそれと同一であることは、控訴人主張のとおりであるが、これらの評価額は、すべて昭和四七年中に行われた本件改造工事を考慮しないで本件家屋の価額を評価したものである。したがつて、このように評価額が同一であるのは、東京都知事が本件家屋の価額を決定するに当り本件改造工事を考慮する必要がないとしたなどの理由によるものである旨の控訴人の主張は、根拠を欠くものである。

二  税務署長は、納税者の納税申告について調査した結果、過少申告であることを発見した場合には、申告税額等を更正しなければならないのであるから、控訴人が想定するように本件相続が昭和四八年中であつたとしても、本件家屋について多額の費用を投じて本件改造工事がされ、資産価値が増加したにもかかわらず、固定資産税評価額にそれが反映されていないことが判明した場合には、本件改造工事による資産価値の増加額をそれに加算して評価し、更正処分をすべきものである。これに反する見解に立脚して、本件課税処分に租税公平主義の原則に違背する違法があるとする控訴人の主張は、失当である。

三  前記三の控訴人の主張事実中控訴人が昭和四八年一一月本件借地権の存する土地の一部である原判決尾添付別表一の番号1ないし8及び13の土地を地上の建物とともに同建物の賃借人らに売却したこと、右土地の借地権に対する被控訴人の評価額が一、八三五万九、四四〇円であることは認めるが、その余の事実及び主張は争う。

(証拠)

控訴代理人は、甲第八号証を提出し、「乙第五ないし第一一号証の成立は認める。」と述べ、被控訴代理人は、乙第五ないし第一一号証を提出し、「甲第八号証の成立は認める。」と述べた。

理由

当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がないと判断するものであり、その理由は、次のとおり付加するほか、原判決の説示理由と同一であるから、ここにこれを引用する。

一  本件家屋の二階は事務所の形態をとつていたが、本件相続開始の直前に四六二万一、九〇〇円の費用を投じて、これを居宅(アパート)に改造したこと、本件家屋の昭和四八年度以降昭和五五年度の固定資産税評価額が昭和四七年度のそれと同一であることは、いずれも、当事者間に争いがない。

ところで、控訴人は、かように本件家屋の各年度の固定資産評価額が同一であることは、東京都知事において本件家屋の価額を決定するに当り本件改造工事を考慮する必要がないと判断したこと等の理由によるものであると主張する。

なるほど、固定資産の価格は、毎年二月末日ほでに決定しなければならないことになつている(地方税法七三四条一項、四一〇条参照)。しかし、それを決定するには、固定資産評価員をして固定資産の状況を毎年少なくとも一回以上実地に調査させなければならないが(同法四〇八条参照)、その評価が回帰的でかつその対象も大量で技術的にも複雑困難な面があることにかんがみれば、地方税法に右のごとき規定があるからといつて、これをもつて本件家屋について昭和四七年以降実地調査に基づく評価が行われたことの証左とすることは許されず、他に控訴人の右主張事実を肯認せしめるに足る証拠はなく、かえつて、成立に争いのない甲第八号証、乙第四、第五号証によれば、固定資産評価員の職務を補佐する任にある台東都税務所長(東京都都税条例施行規則三二条二項参照)は、昭和五三年八月二五日東京国税局長の照会に接するまで、本件家屋につき本件改造工事が行われた事実を知らなかつたことを認めるのに十分である。

それ故、控訴人の右主張は、採用できない。

二  控訴人は、もし本件相続の開始が昭和四八年中であつたとすれば、被控訴人も本件家屋の価額を本件改造工事による資産価値増加額の加算されていない固定資産税評価額によつて決定したであろうという前提に立つて、本件課税処分の違法を主張する。

しかし、本件家屋について前叙のごとく昭和四七年度中に多額の費用を投じて本件改造工事が行われ、資産価値が増加したにもかかわらず、被控訴人が昭和四八年度において右資産価値の増加を反映しない固定資産税評価額によつて本件家屋の価額を決定したであろうというのは、控訴人の独自の想定にすぎないものである。

それ故、控訴人の右主張は、その前提において失当たるを免かれない。

三  控訴人は、また、その主張に係る土地の借地権価額が該土地の売買代金として契約書に記載された金額と対比してみて異常に低額であるということを前提として、本件家屋の価額より控除された借地権価額の評価の違法をいう。

しかし、控訴人主張に係る右借地権価額の基本とされた売買代金が通常の土地の取引において適正に形成される価額に照応するものであることを認めるに足る的確な証拠がない。それ故、被控訴人の右主張は、前提そのものにおいて失当といわざるをえない。

よつて、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡部吉隆 裁判官 蕪山厳 裁判官 安國種彦)

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